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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.395 − 授 (さずける) −
二十四節気では大雪(たいせつ)、雪が本格的に降り出す時季です。新暦なので、季節感にズレがあります。
信夫の里でも、大学に赴任した当時と今とでは降雪に隔世の感があります。
日の出前、山陰(やまかげ)にある太陽の光を浴びた満月が、山の端のすぐ上空で黄金色(こがねいろ)に輝いています。
今が最も早い日没(12月3日〜10日、16時19分)です。
12月13日、“正月事始め”(しょうがつごとはじめ)です。
昔は、新年を迎える準備で、大掃除をしました。
己の幼い頃は、煤竹(すすたけ)の代わりに竹刀(しない)の割竹(わりだけ)で畳を叩いていました。
大枯木一枝の無駄もなかりけり
広田 良枝
この時季、見物(みもの)は冬木立(ふゆこだち)です。
特に、欅(ケヤキ)の巨木は、葉が散り尽くすと、扇を半開きにしたような特有の樹形を見せてくれます。
日の出や日の入りの陽射しを背にした、葉を落とし切った大木とその枝の堂々とした佇(たたず)まいは“自然の造化(ぞうか)”の妙です。
“今、世間で起きている事”を「花だより」に、取り上げたことはありません。
一面を飾っている記事でも、時の移ろいの中では、些細(ささい)な事と化してしまうからです。
旧(ふる)い人間である己は、新聞から日々伝えられる情報を得ています。
“木クズに電球を置いて火災が起き、幼な児(おさなご)が焼死”という記事は、理解を越えていました。
幼かった頃、手っ取り早く火を起こす誰にでも出来る方法は、マッチでカンナくずに火を付けることでした。
“カンナくずに火を付けた様(よう)に喋る(しゃべる)”という表現、簡単に火が付き、あっと言う間に火が早く燃え広がることから敷衍(ふえん)された言葉です。
当時は、子供でも知っている常識です。電球の表面は、触(さわ)れない熱さです。遊んで家に帰った時、悴(かじか)んでいる手を直ぐ(すぐ)に暖める手段は、電球の熱でした。
この事故は、今の若者が“電球は火が付く位熱い”という常識を持っていない事を示しています。
大人が注意しなかったのは、“なるべく関わりを避ける”という昨今の風潮の結果かも知れません。
“幼い時期に肉体的苦痛を味わうことが無かった人間は、長じて不幸な人間になる”(コンラッド・ローレンツ)という警句があります。人間に必要な恐怖、怒りは、苦痛により育(はぐく)まれるのです。
今という時代、変化が速くて、人間(ヒト)が本来持っている感覚では随(つ)いていけません。
“余裕の喪失”です。その結果、他者への思い遣りや気配りも失っています。
農家が丹精込めて育てた作物が盗まれるという事を耳にします。
幼き時、田舎の故郷では、 “農作物に手を付けてはいけない”と親や周りから厳しく諭(さと)されていました。
一転、今の世情の背景に何が潜(ひそ)んでいるのでしょうか。
この世情は、同僚、友人、家族などの内(うち)なる“世間”と、日々の営みを担保(たんぽ)してくれている外の“社会”との境界がなくなってしまった結果とも言えます。
内と外の境界に無関心になると、挨拶しても挨拶を返さない、“勤務開始時間は職場到着時間であって、仕事を始める時間ではない”、という“プロ精神の欠如”に繋(つな)がります。
自らの仕事特有のプロとしての厳しさや“世の中には己の知らない事が多くある”という懼れ(おそれ)を持たずに営みをおくっているのでしょうか。
“他人の一寸、我が身の一尺”です。
他人の失敗には気付いても、自分の至らなさには気付かないものです。
人生の先達(せんだつ)には、自らの人生で学んだ悔恨(かいこん)と失敗から得た知恵を、次の世代である弟子や部下達に伝えて欲しいものです。
今週の花材は、両室を寒と暖色の使い分けで、違った印象です。花は、早や春を告げる使者です。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
信夫の里でも、大学に赴任した当時と今とでは降雪に隔世の感があります。
日の出前、山陰(やまかげ)にある太陽の光を浴びた満月が、山の端のすぐ上空で黄金色(こがねいろ)に輝いています。
今が最も早い日没(12月3日〜10日、16時19分)です。
12月13日、“正月事始め”(しょうがつごとはじめ)です。
昔は、新年を迎える準備で、大掃除をしました。
己の幼い頃は、煤竹(すすたけ)の代わりに竹刀(しない)の割竹(わりだけ)で畳を叩いていました。
大枯木一枝の無駄もなかりけり
広田 良枝
この時季、見物(みもの)は冬木立(ふゆこだち)です。
特に、欅(ケヤキ)の巨木は、葉が散り尽くすと、扇を半開きにしたような特有の樹形を見せてくれます。
日の出や日の入りの陽射しを背にした、葉を落とし切った大木とその枝の堂々とした佇(たたず)まいは“自然の造化(ぞうか)”の妙です。
“今、世間で起きている事”を「花だより」に、取り上げたことはありません。
一面を飾っている記事でも、時の移ろいの中では、些細(ささい)な事と化してしまうからです。
旧(ふる)い人間である己は、新聞から日々伝えられる情報を得ています。
“木クズに電球を置いて火災が起き、幼な児(おさなご)が焼死”という記事は、理解を越えていました。
幼かった頃、手っ取り早く火を起こす誰にでも出来る方法は、マッチでカンナくずに火を付けることでした。
“カンナくずに火を付けた様(よう)に喋る(しゃべる)”という表現、簡単に火が付き、あっと言う間に火が早く燃え広がることから敷衍(ふえん)された言葉です。
当時は、子供でも知っている常識です。電球の表面は、触(さわ)れない熱さです。遊んで家に帰った時、悴(かじか)んでいる手を直ぐ(すぐ)に暖める手段は、電球の熱でした。
この事故は、今の若者が“電球は火が付く位熱い”という常識を持っていない事を示しています。
大人が注意しなかったのは、“なるべく関わりを避ける”という昨今の風潮の結果かも知れません。
“幼い時期に肉体的苦痛を味わうことが無かった人間は、長じて不幸な人間になる”(コンラッド・ローレンツ)という警句があります。人間に必要な恐怖、怒りは、苦痛により育(はぐく)まれるのです。
今という時代、変化が速くて、人間(ヒト)が本来持っている感覚では随(つ)いていけません。
“余裕の喪失”です。その結果、他者への思い遣りや気配りも失っています。
農家が丹精込めて育てた作物が盗まれるという事を耳にします。
幼き時、田舎の故郷では、 “農作物に手を付けてはいけない”と親や周りから厳しく諭(さと)されていました。
一転、今の世情の背景に何が潜(ひそ)んでいるのでしょうか。
この世情は、同僚、友人、家族などの内(うち)なる“世間”と、日々の営みを担保(たんぽ)してくれている外の“社会”との境界がなくなってしまった結果とも言えます。
内と外の境界に無関心になると、挨拶しても挨拶を返さない、“勤務開始時間は職場到着時間であって、仕事を始める時間ではない”、という“プロ精神の欠如”に繋(つな)がります。
自らの仕事特有のプロとしての厳しさや“世の中には己の知らない事が多くある”という懼れ(おそれ)を持たずに営みをおくっているのでしょうか。
“他人の一寸、我が身の一尺”です。
他人の失敗には気付いても、自分の至らなさには気付かないものです。
人生の先達(せんだつ)には、自らの人生で学んだ悔恨(かいこん)と失敗から得た知恵を、次の世代である弟子や部下達に伝えて欲しいものです。
今週の花材は、両室を寒と暖色の使い分けで、違った印象です。花は、早や春を告げる使者です。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■ビワ バラ科/常緑高木/《名前の由
来》果実または葉が楽器の琵琶の形に似てい
ることから /11月頃に小さな白い花が咲き、
翌年初夏に果実がなる。今回は開花前の蕾の
状態。
■エリンジュウム〔スーパーノバ〕
セリ科/多年草/長く鋭い苞と松かさのような
花が特徴。成長とともに青みを帯びる。非常に
花持ちが良く、ドライフラワーにも適す。
■リュウカデンドロン〔ガルピニ〕
ヤマモガシ科/常緑低木/前回使用のプルモ
ーサスと同じアフリカ原産のワイルドフラワー。
「ガルピニ」はシルバー系でクリスマスアレンジ
やリースに利用される。
■アンスリュウム〔エンジェル〕
サトイモ科/常緑多年草/ツヤツヤの花(苞)
と葉が特徴の南国の花。 花弁のように見える
団扇状の部分は苞で、棒状の部分が花。「エン
ジェル」は純白種。
■オーニソガラム〔サンデルシー〕
ユリ科/球根植物/ヨーロッパ〜西アジア、ア
フリカに約100種。長い茎頂に6片の星形の花
を次々と円形状に咲かせる。水揚げが良く、蕾
までしっかり咲ききり長く楽しめる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3951.jpg
■ビワ バラ科/常緑高木/《名前の由
来》果実または葉が楽器の琵琶の形に似てい
ることから /11月頃に小さな白い花が咲き、
翌年初夏に果実がなる。今回は開花前の蕾の
状態。
■エリンジュウム〔スーパーノバ〕
セリ科/多年草/長く鋭い苞と松かさのような
花が特徴。成長とともに青みを帯びる。非常に
花持ちが良く、ドライフラワーにも適す。
■リュウカデンドロン〔ガルピニ〕
ヤマモガシ科/常緑低木/前回使用のプルモ
ーサスと同じアフリカ原産のワイルドフラワー。
「ガルピニ」はシルバー系でクリスマスアレンジ
やリースに利用される。
■アンスリュウム〔エンジェル〕
サトイモ科/常緑多年草/ツヤツヤの花(苞)
と葉が特徴の南国の花。 花弁のように見える
団扇状の部分は苞で、棒状の部分が花。「エン
ジェル」は純白種。
■オーニソガラム〔サンデルシー〕
ユリ科/球根植物/ヨーロッパ〜西アジア、ア
フリカに約100種。長い茎頂に6片の星形の花
を次々と円形状に咲かせる。水揚げが良く、蕾
までしっかり咲ききり長く楽しめる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3951.jpg
【秘書室】
■水仙〔日本水仙〕(ニホンズイセン) ヒガンバナ科/球根植物/早咲
種、遅咲種など多品種あり、12月〜4月頃まで楽しめる。 「日本水仙」は早
咲種で12月頃から咲き始め、お正月飾りにも利用される。とても良い香りを
放つ春の花。
■サンダーソニア ユリ科/球根植物/細い茎にベル型の小さな花が連
なって咲く。花色はオレンジでランプを灯したような可愛らしい花姿。 原産地
の南アフリカでクリスマスの頃に咲くことから別名「クリスマスベル」。
■スプレー菊〔フロッギー〕 キク科/多年草/茎が分岐し一本に数輪の
花が咲くスプレー咲の菊。大菊、小菊に比べ、花色も豊富で可愛らしい印象。
「フロッギー」は緑色のポンポン咲タイプ。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3952.jpg
■水仙〔日本水仙〕(ニホンズイセン) ヒガンバナ科/球根植物/早咲
種、遅咲種など多品種あり、12月〜4月頃まで楽しめる。 「日本水仙」は早
咲種で12月頃から咲き始め、お正月飾りにも利用される。とても良い香りを
放つ春の花。
■サンダーソニア ユリ科/球根植物/細い茎にベル型の小さな花が連
なって咲く。花色はオレンジでランプを灯したような可愛らしい花姿。 原産地
の南アフリカでクリスマスの頃に咲くことから別名「クリスマスベル」。
■スプレー菊〔フロッギー〕 キク科/多年草/茎が分岐し一本に数輪の
花が咲くスプレー咲の菊。大菊、小菊に比べ、花色も豊富で可愛らしい印象。
「フロッギー」は緑色のポンポン咲タイプ。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3952.jpg