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福島県立医科大学:理事長兼学長ごあいさつ
竹之下誠一理事長兼学長写真
理事長兼学長
竹之下 誠一

今年の幕開けは大変痛ましい災害から始まりました。能登地震における被災の様子は、13年前の福島をはじめとする東北一円の被災地の様子を思い出させるほど、大変酷い惨状を呈しております。この災害でお亡くなりになられた方に心よりお悔やみを申し上げますとともに、今も困難な避難生活を強いられている被災者の皆さまにお見舞いを申し上げます。

さて、その被災地には本学からもDMATをはじめ多くの医療関係者が支援に入り活動しております。彼らの活動報告やメディアの報道を聞くにつけ、気付いたことがあります。それは、福島県という言葉が持つ重みと期待です。福島県と掲げた医療支援チームに、行く先々で掛けられる言葉は「福島の方ならどうすべきかご存じですよね」という、すがるような言葉だったそうです。もちろん能登へ派遣された医療スタッフは、13年前の震災の経験者ばかりではありません。しかし、福島で医療を学び、携わっているのであれば、災害医療に秀で、避難所での保健衛生管理を指導し、被災者の心のケアにアドバイスができると期待されるのです。被災地にとっては、本学は東日本大震災を乗り切った災害への対応に長けた集団だと考えるのは当然と言えるでしょう。なぜなら本学は、世界で唯一、震災、津波、原子力災害という未曽有の複合災害を経験し、当時、全ての教職員が被災者であったにもかかわらず、福島県の医療崩壊を防ぐべく、本学を最期の砦として死力を尽くしてきた歴史を持つ医科大学だからです。
 振り返ると、私たちは、2011年の震災以降、13年間にわたり、福島の復興を健康と医療の面から支えると宣言し、教育・研究・医療という従来の使命に加え、県民の健康の見守りという歴史的使命の完遂に邁進してきました。本学にとってこの13年間は、これらの使命をより高い次元で達成するための新たな挑戦と試行錯誤の連続でした。その結果、絶望的ともいえた環境の中で、愚直にくじけることなく取り組んできたあらゆる復興への努力・経験・知見を、今や、いよいよ希望や夢に変えて将来世代に残していくステージを迎えることができたのです。すなわち過去に例のない複合災害から復興の過程で得られた経験や知見を体系化し、普遍化し、人類全体の共有知とするプラットフォームを構築し、これからはそのプラットフォーム上で、これまでの取組みを具体的に目に見え、社会に広く貢献できる形にすることがミッションとなります。そして、その実現のためのキーワードが、「レジリエンス」「アライアンス」「アジリティ」の3つです。
・レジリエンス:変化や課題に対し、固定観念に捉われないしなやかさ、
・アライアンス:多くのアイデアを集め、より良い対策を練るための連携、
・アジリティ :好奇を逸さずタイムリーに行動する、
これらの言葉の持つ意味に留意しながら、私たちは新しいステージでのミッションを着実に果たしてまいります。

医療の現場には「チーム医療」という言葉があります。一般的には医師を始め、多様な医療専門職のメンバーが緊密に連携して医療にあたることを言いますが、私たちはこれを広く解釈し、本学全体が一つのチームという捉え方をします。つまり、本学に所属している限り、直接医療には携わらない職員も含めた誰もが一つのチームに属するメンバーであり、今私たちにできる最善の医療を提供するという一つの目的のために邁進するということです。そして、そのためにはひとりひとりが常に知識をアップデートし、変化することが必要です。新たな知識は世界中で日々更新され、求められる医療は地域によっても個人個人によっても多種多様です。ですから、世界の視点で物事を見て考え、地域の視点で知識を役立て、自らを常に変化、進化させることが、本学における行動規範となります。もちろんアップデートする知識は最新情報ですから、最初は分からないことばかりです。しかし、分からないことを、「分からないので」と放置すれば、分かることによって変化する機会を失います。本学のモットーは「ピンチをチャンスへ 変化を進化へ」です。私たちはNot changing is the greatest risk. 変化しないことが最大のリスクである、と意識し、積極的に変化を、つまり、分かろうとする意識を常に持ち、一丸となってより良い医療の実現と提供に取り組んでまいります。

令和6年(2024) 4月1日
福島県立医科大学 理事長兼学長 竹之下 誠一

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