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令和6年度 福島県立医科大学入学式 学長式辞 (令和6年4月3日)

入学式の様子1 入学式の様子2 入学式の様子3

本日ここに、令和6年度福島県立医科大学入学式を挙行できますことは、本学にとってこのうえない慶びであります。医学部130名、看護学部84名、保健科学部145名、別科20名、大学院生40名、総勢419名の本日入学を許可された皆さん、ご入学、誠におめでとうございます。こうして希望にあふれた皆さんを前にし、本学教職員一同、皆さんの志を実現するため、これから全力を挙げてしっかりサポートしてまいります。

そして、新型コロナウイルス感染症による規制のない 入学式は4年ぶりとなります。本日はご多忙の中、福島県知事 内堀 雅雄 様、福島県議会 副議長 山田 平四郎 様のご臨席を賜り、誠にありがとうございます。加えて、保護者の皆さまの ご列席のもと、この入学式を挙行できますことは喜ばしい限りでございます。
 今年の幕開けは大変痛ましい災害から始まりました。能登地震における被災の様子は、十三年前の福島をはじめとする東北一円の被災地の様子を思い出させるほど、大変酷い惨状を呈しております。この災害でお亡くなりになられた方に心よりお悔やみを申しあげますとともに、今も困難な避難生活を強いられている被災者の皆さまにお見舞いを申しあげます。また、本日も台湾東部で大きな地震が発生しました。甚大な被害が想定されており、被災された皆さまにはお見舞いを申しあげます。

さて、本日皆さんが入学する福島県立医科大学は、世界で唯一、震災、津波、原子力災害という複合災害に見舞われた医科大学です。当時、全ての教職員が被災者であったにもかかわらず、福島県の医療崩壊を防ぐべく、本学を最期の砦として死力を尽くしてきた歴史があります。そして、今も福島県の復興を医療と健康の面から支えるという使命を担っている大学です。
 今回の能登地震においても、本学のスタッフが医療支援のため能登に多数入りました。そして、行く先々で掛けられる言葉は「福島の方ならどうすべきかご存じですよね」という、すがるような言葉だったそうです。もちろん能登へ派遣された医療スタッフは、十三年前の震災の経験者ばかりではありません。しかし、福島で医療を学び、医療に携わっているのであれば、災害医療に秀で、避難所での保健衛生管理を指導し、被災者の心のケアにアドバイスができると「期待」されるのです。皆さんも今後、本学の学生であれば、あるいは将来、本学を母校として医療の各分野で活躍するようになれば、それがたとえ国外であっても、災害・被ばくの健康影響や災害時の医療のことについて必ず問われたり、意見を求められたり することになるでしょう。
 つまり、本学で医療を学ぶということ、本学の一員となるということは、必然的に福島県の復興を医療と健康の面から支えるという使命を担う一員となることです。そして本学の学生である限り、様々な災害との関係性や課題を見出し、真摯に考え行動してください。

さて、これから皆さんは、それぞれの志の実現に向かって学び始めます。冒頭に話したように、私たち教職員一同、それを全力でサポートしていきますが、医療を取り巻く環境は急速に変化しており、その変化は 私たちでさえ経験したことのないものです。例えば、世界に比しても急速に進む高齢化や、社会保障制度の危機といった社会的な変化、さらには生活習慣病を中心に複数の疾患を抱えた高齢者の増加や予防医療の重要性の向上、温暖化によりこれまで日本にはなかった感染症が発生する懸念も示されています。これらは、皆さんが医療の専門家として社会に出ていく頃には、切実な課題になっているでしょう。そのような将来が迫っている中で医学を始め医療を学び始める皆さんは、普遍的な知識と手技を学ぶことはもちろんのこと、新しい時代に求められる医療の在り方についても考える必要があります。しかし、いずれの変化も過去に経験がない変化です。つまり、どの課題にも答えがないということでもあります。
 皆さんは、このようなまだ答えのない事柄について考えることができるでしょうか。これまで皆さんは、答えのあること、既に分かっていることを先生に教わり、記憶するという学びを繰り返してきました。しかし、大学とはそれらの知識をベースに答えのないことを考察し、互いに議論し、新しい知識を創出する場です。つまり、考えるだけでなく、自分の考えを伝え、相手の考えを理解するコミュニケーション力、さらには自分とは違う考えに接してもその真意を汲み取る寛容な姿勢も求められます。これまでは自分の考えを主張し、意見を戦わせ、自分の意見を通そうとすることが多かったかもしれません。それも時と場合によっては大切なことです。しかし、その多くは自分なりの「答え」があったからこそ強く主張が出来たのではないでしょうか。大学で向き合う課題は、地球規模の大きな課題や、長きにわたって克服できず、先人たちの試行錯誤が続いているむずかしい課題ばかりであることがすべてであります。そのような答えのない事柄に対応する時、私たちは独りよがりの主張で押し切るのではなく、互いの知恵を持ち寄り、すり合わせ、より良い第3の考え方を生み出す能力こそが不可欠になります。それこそが新しい知の創出、今でいうイノベーションに繋がるのです。

激論を戦わせるのが筋肉質な思考とコミュニケーションだとすれば、しっかり相手の話を聞きながら新しい知を生み出すことはしなやかな思考とコミュニケーションだということがいえるでしょう。キーワードは「しなやかさ」です。皆さんはぜひこの「しなやかさ」を 身に付けることを意識してください。
 自分の考えに固執し、意地でもそこから出ないスタンスではなく、人の意見に耳を傾け、敢えて少し自身の考えの枠からはみ出てみるのです。それは、最初は少し勇気のいることかもしれません。しかし、そのはみ出たところに、これまで自分には経験のない事柄や視点を発見することができるはずです。このはみ出ようとする姿勢、すなわちしなやかさこそが、ひとり一人の思考の幅を広げ、新たな進歩やチャレンジ、ひいてはイノベーションのタネになっていくのです。

皆さん一人一人が、
“Always grasp things with a supple hand.”
「常に物事をしなやかに捉える」ことを意識し、それぞれの志を実現すべく前進してください。そして、本学で多くのことを学ぶ過程で、これまでにない新しい知を発見し、自らを高めて行ける人材へと成長してくれることを期待しています。

令和6年4月3日
福島県立医科大学
学長 竹之下 誠一

事務担当 : 教育研修支援課

学生総務係 : 電話 024-547-1972
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