菊地臣一 コラム「学長からの手紙 〜医師としてのマナー〜」
118.連絡・確認の励行を
再び同じようなテーマで書くようになってしまいました。本日他科の教授が御挨拶にみえられ、医局員が怪我をしてお世話になったとの礼を言いに来ました。しかし私には何の事か分からず、曖昧な返事をしました。笑いながら「教授には報告がないんですか」という皮肉めいた言葉を吐かれてしまいました。
組織というものは窓口がはっきりしていないと、外から見ると極めて訳の分からないものに見えて、扱いに困るものです。他日、我が整形外科医局が、周囲の行政機関や病院から批判されたのは、「窓口がどこにあるのか分からない」という点でした。ですから組織というものは、窓口をはっきりさせてそこに行けば全て話が分かるという風にしておかなければなりません。
また、その組織に世話になった人は、組織のトップに挨拶に来ます。これは社会通念上当たり前の事です。そういう礼を尽くされれば、こちらもきちんと礼をもって報いなければなりません。そういう時に組織のトップが、下で起こった事実を把握していないと、周囲のその組織に対する信頼性が揺らいできます。更にはそれを報告しなかった人の評価まで下げかねません。
以前にも書きましたが医療をする人間は特に連絡・確認をきちんとして、物事が何の障害もなくスムーズに動く事を大事としなければなりません。スムーズに組織が機能する事は、何もしていない事ではなくて、その水面下ではアヒルの水掻きの如く激しく動いて、結果として表面上は円滑に動いていく訳です。変化のないという事が、個人にとっても組織にとっても最も楽な構えなのです。それが過度に過ぎると怠惰に流れ、その組織や個人に活気がなくなりますが、出来ることなら毎日淡々と組織や個人が過ぎ去って行く日々を送るのが、最も安定した姿なのです。
以前にも書きましたが、長年勤務した人が突然いなくなって、そこで初めてその人、或いはその人がやっていた仕事の大切さが認識されるのです。その人がいる事で、我々の目に見えない所で、その人が組織のある部分を支えていたことが、いなくなって初めて気が付く訳です。ですから連絡・確認は個人や組織の安定性の為にも、或いは個人や組織の評価の為にも欠かせないものだと思います。注意しましょう。