菊地臣一 コラム「学長からの手紙  〜医師としてのマナー〜

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45.偽医者を真似なさい

「医師とはどうあるべきか」よく議論される事です。私の様に教育に携わっている人間には常に公式或いは非公式に見解を求められます。私は教育の中で常に学生に言っている事は「理想の医師像は偽医者である」という事です。考えて見て下さい。偽医者で評判の悪い人がいるでしょうか。偽医者は免許証を持っていないが故に、徹底して患者さんが求める医師像を具現化しようと努力してます。

正しいマナー、清潔な服装、爽やかな、絶える事のない笑顔、これらを全て具現しているのが偽医者です。逆に医師のうち少なくない人々は医師免許証の上に胡座をかき、だらしない服装、くわえ煙草、スリッパで廊下を歩き、聴診器を首にぶら下げ、白衣の前をはだけ、正直言って見るに耐えない姿です。中身がないからその顔には品位がありません。最も質の悪い公務員の悪しき典型なのかも知れません。どうしてかと言うとそれは医師免許証という免許に胡座をかいている結果だからです。

私は骨つぎを生業としていた亡くなった父から、亡くなる直前に「臣一よ、医師からメスと薬を取ったら何が残る。その残ったものこそが、その人間の本質である。それを取ったら何も残らない様な医師であれば医師は止めた方が良い」というのを遺言の様に言われた事があります。我々は医師免許証というものに安住していないでしょうか。医師免許証からもたらされる大きな権限に寄り掛かりは過ぎていないでしょうか。一度、そういう付加価値的なものを全て捨てて、医師免許証がないとしたら通 用するか、人間として患者さんに信頼されているか、もう一度考えるべきです。

我々は医師である事を自分の選択で選んだ訳です。ですから我々は、医師に要求される諸々のものを、医師として勤務している時間の間は完璧に演じなければなりません。それが医師に課せられた使命です。よくその事を理解して、徹底して偽医者を真似して下さい。

 

 

 

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