菊地臣一 コラム「学長からの手紙  〜医師としてのマナー〜

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33.言い訳をするな

我々の仕事は全て人と人との繋がりの上でしか成立しません。病院という性格上あらゆる職業の人、あらゆる考え方の人、あらゆる年代の人が一つの目的に向かって機能集団として働いたおります。病院或るいは医療というものは医者が居なければ動きません。しかし医者だけでは動きません。これが医療の実態です。そういう場において、その中心になる医師が仕事をきちんと処理しなかったりすると、その影響は大なるものがあります。しかし、これだけ医師に対する仕事量が増え、それに対するシステムが整備されていないとどうしても医師は仕事が抜けてしまいがちです。しかし、そこでつい医師は言い訳をしたくなります。しかし言い訳をした所で何の問題の解決にもなりません。

自分が言い訳をする場合を考えてみてください。言い訳をするというのは、即ち自分の過ちを正当化する事なのです。私自身の経験でも、正当なる言い訳、すなわち自分がこういうミスを犯したのはそれなりの充分な理由があるという事はいくらでもあります。言い訳がきかない事と同じ位あると思っております。しかし、言い訳をしたからといって物事は全く変わりません。結果は同じです。言い訳をすると却って人は反発をしますし、自分自身も自己嫌悪に陥るのが常です。人をまとめていく、或いは組織をまとめて一つの目的に向かって運営していく際のコツは言い訳をしない事です。言い訳をしないという事はその人に何の言い分もないという事を必ずしも意味しません。むしろ周囲の方が、充分にその人には正当な言い訳があるという事は判っています。ですから、言わなくても良いのです。言わないでいる事が却って、その人間が黙って耐えて黙々と仕事をしているという評価に繋がるわけです。また、言い訳をしない事が結局日本人の美学である、潔さに繋がるわけです。どうぞ言い訳をしないで頑張って下さい。

不平不満をバネにして生きてきたというのは、私の尊敬するF医師からの私が東京へ旅立つ時のはなむけの言葉でした。私は当時の医局体制に対して大いなる不満をもってどんどんそれに対して不満をぶつけ、かつ行動しかつそれに反発して頑張りました。ただその結果、私も私の周囲の人も傷つきましたし、傷つけました。ですから不平不満をバネにする事は良いのです。しかし、それをあまり周囲に言う事は得策ではありません。それをじっと内に秘めてそれを自分の飛躍の為のバネにして下さい。不平不満或いは自分のミス、それは結局自分の飛躍の為の大いなるスプリンブボードになる筈です。ミスをするという事は勧められませんが、ミスはミスとして、それを言い訳の為に材料にしないで飛躍の為の材料にしましょう。

 

 

 

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