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「学長からの手紙」番外編 〜 新聞・雑誌への寄稿文から 〜

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2010年10月25日発行 月刊誌「臨床整形外科」 第45巻第10号

「臨床整形外科」(臨整外)は、医療系学術専門誌出版社「医学書院」より発行している、整形外科領域の第一線の臨床的知識を紹介する月刊誌です。医学界および関係領域で活躍するエキスパートを編集委員等に迎え、学術専門誌としてのクオリティと正確さを堅持しています。
菊地臣一本学理事長兼学長は、前年度の編集委員に引き続き、現在は編集主幹として発行に携わっています。

医学書院  http://www.igaku-shoin.co.jp
   (
「臨床整形外科」 紹介ページ) http://www.igaku-shoin.co.jp/mag/rinseige

あとがき

猛暑の夏も先が見えてきて、日常風景の中に秋の到来を感じるようになってきました。
秋は学会シーズンのもう一つのピークであり、思索に耽る(ふける)時期でもあります。

先日、国際学会での講演のために海外出張しました。
学会の発表や展示をみていると、海外の整形外科は文字通り「外科」であることを改めて認識させられました。企画や発表のほとんどは手術に関する問題です。
一方、わが国の整形外科は、本号をみても、その守備範囲は広く、かつ深いのがわかります。
わが国の先人たちが築き上げてきた独自の整形外科が、今まで通り繁栄を続けて行くためには、我々自身に相当な覚悟と努力が求められます。今までの延長線上の次元での努力では、到底、目的を達し得ないのではないかという予感がします。
今、わが国での整形外科は、将来に向かっての選択の岐路に立っていることを改めて実感させられました。

整形外科の対象患者の年齢も、筆者が夢中で診療に打ち込んでいた頃とは、20〜30歳も高齢化が進んでいます。80歳台の人は、60歳台にみえても、身体機能は80歳台に近いのです。
このような、世界に例をみないスピードで超高齢化社会に突入したわが国の整形外科医療のあり方を、もう一度、医療関係者と国民との間で真剣に議論して「認識の共有」を確保しておくことが必須と考えます。
何故なら、この問題に関してはわが国が先頭を走っていて、参考にする前例はないし、なおかつ、文化の違いが認識の共有に反映されるはずだからです。

健康管理(予防)から、治療、そして介護まで、運動器のすべてに対応できるわが国の整形外科医は、「cure」とともに「care」の視点を同時に持ち、“手術もできる運動器のプロ”であることを自信を持って、国民に提示できるような努力と開示の姿勢が求められているような気がします。

一時、海外での整形外科学会に身を置いた時、かつて、海外の学会で発表し続けた時に感じた心の昂ぶり(たかぶり)が甦りました。
生涯整形外科医でありたいと、改めて認識しました。

 

 

 

 

( ※ Webページ向けに改行位置を改変し、転載しております)

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