菊地臣一 コラム「学長からの手紙 〜医師としてのマナー〜」
89.現在所属している組織や人を愛せない人間は,これから出会うであろう組織や人も愛せない
以前に学生の雑誌にも寄稿しましたが、自分がこの大学に必ずしも希望しないで入学した場合に、卒業後は自分の希望する大学や病院に旅立って行き、大学の同窓会には入会しない人が時々いるそうです。
しかし考えてもみようではありませんか。何等かの縁で出会った組織、何等かの縁で出会った仲間達、現に自分が所属している大学やクラス、あるいはグループを愛せなくて、これから出会うであろう組織や人間は愛せるということは有り得るでしょうか。
これは見方を変えて言うと、その人間の功利性の1つの表現なのかもしれません。自分が何かの縁で出会った人間や組織は愛せなくて、これから出会うであろう人間や組織は愛せるという人間を他人は信用するでしょうか。
前にも述べましたが、どの出会いが自分の一生を左右するのかはその時はわかりません。ですから、一つ一つの出会いを大切にしなくてはならないのです。「自分のこれからの人生に大いに役に立つであろう人間や組織は愛せる」という功利性はその功利性によって破滅する運命にあるはずです。お互い気を付けましょう。