菊地臣一 コラム「学長からの手紙  〜医師としてのマナー〜

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68.組織に賭けず個人に賭けよ

この季節になると、学生からよく進路について相談されます。別な文章にも書いた事がありますが、医師としての人生には新幹線の指定席券は有りません。だからこそ夢のある医師としての人生があるのではないかと私自身は考えております。

また、どんな組織に入るかを気にする人が多い様です。でも、注意しなければならない事は、組織には人格は無い事です。組織の性格はそれを構成している人間で作られます。ですから、その構成人員が変われば自ずとその組織の性格も変わります。当然、組織の価値基準が今日と以前とでは違っているという事も希ではありません。でもそれは決して驚く事ではなくて、トップ乃至は構成人員の内容に変更があれば当然な事です。

患者さんも時々この事に関する誤解が有ります。一流大学病院で診てもらったのに誤診されたとか、対応が適切ではなかったとか、しかし、考えてもみて下さい。一流大学病院という医師は居ないのです。一流大学病院の何と言う医師に診てもらったかが重要なのです。また、同じ様な事は自分の進路決定や自分の研修についても言えます。この人の下で学ぼうと慕って来る人間を可愛いくない筈はありません。

そうであればこそ、その人間は自分の所属が変わったとしても慕って来た人間を最後まで面倒を見ようと努力するでしょう。しかし、組織というものに憧れてその組織に入ると結果的に誰も彼を支えてくれる人間はいないという事が起こり得ます。若い人は意外とその事に気が付かない人が多い様です。ですから、自分の将来や自分の医師としての研修の場は組織をベースに考えるのではなくて、個人をベースに考えるべきだと思います。

 

 

 

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