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大学院医学研究科入学式 学長式辞 (令和6年10月1日)

大学院医学研究科入学式の様子1 大学院医学研究科入学式の様子2 大学院医学研究科入学式の様子3

本日ここに、令和6年度後期福島県立医科大学大学院入学式を挙行できますことは、本学にとってこの上ない慶びであります。
 ただいま入学を許可された医学研究科博士課程15名の皆さん、ご入学誠におめでとうございます。今日から仲間となる皆さんが互いに切磋琢磨し、将来、共にその志が成就できるよう、教職員一同、しっかりサポートしてまいります。

祝辞を述べるにあたり入学式で毎年必ずお伝えしていることがあります。それは、福島県立医科大学が担う使命と、福島で医学を学ぶことの意味についてです。本学医学部から進学された方には繰り返しになりますが、県立医科大学で学ぶ以上、これだけは忘れてはならないことですから、改めてお話しいたします。

2011年3月11日、福島県は未曾有の地震と津波、さらには原発事故という複合災害に見舞われました。本学は、震災後いち早く、自らの新たな使命として「健康と医療の面から福島の復興を支える」ことを宣言。この使命の完遂に大学の総力を挙げて取り組み、試行錯誤を繰り返してきました。さらに現在は、その取り組みをサイエンスに基づいて検証、評価し,その知見を世界に共有することに注力しているのです。
 あの惨禍から13年。皆さんにとっては「過去のこと」という意識が強いかもしれません。しかし、世界で唯一、原子力災害を含む複合災害を経験した医科大学である本学で医学を学ぶ者が、震災、原発事故、その被災者の方々の悲しみ、苦しみ、そして悔しさに対し、無関心でいることは許されません。自分自身の中に、この惨禍との接点や課題を見出し、真摯に考え、行動してください。福島に刻まれた歴史に対し、私は知らない、関係ない、という姿勢は許されないこと、福島の復興に常に問題意識を持ち続けることを肝に銘じ、医学のエキスパートとしての学びをスタートさせてください。

さて、本日より皆さんは大きな志を抱いて、医学に関する学びをさらに追求する過程に入ります。それはこれまで以上に大変な道のりであることは想像に難くありません。しかし、だからといって、効率ばかりを追い求めないでください。最近当たり前のように価値とされる「タイムパフォーマンス」や「コストパフォーマンス」を優先した学びは、結果として、皆さんが専門家として長い社会人生活を送ることになった時、決して身に付かないものです。これは、皆さんより先に同じ道を通ってきた私たちからの忠告です。
 これからの研究生活において、皆さんは目先の成果に右往左往、一喜一憂するのではなく、広い視野で長期的なものの見方をすることを常に意識してください。すぐに役立つ成果を挙げたく、焦ることもあるかもしれません。しかし、すぐに役立つものは、すぐに役に立たなくなるものです。確実にゴールにたどり着く1本道を予め教えてもらうのではなく、あちこちさまよいながら進み、引き返すことを繰り返して下さい。研究において無駄はありません。間違えていれば「この道は違う」という確実な成果を手にすることができるのです。その結果、いずれ自分の歩んだ道を振り返れば、より効率良くアプローチできる様々な道はもちろん、ゴールにたどり着けない道、別の成果へつながる道をも見出せるようになるのです。しかし、それは試行錯誤を繰り返した者だけが得られる特権です。そして、試行錯誤の繰り返しは、思考の筋力を鍛え、どのような場面にも応用が利く力も備える唯一の方法なのです。

私たちは大学院教育において3つの節目を意識しています。最初の節目は単に知識、知見、情報を皆さんの頭の中に入れる段階。言ってみれば頭でっかちの状態です。二つ目の節目はそれらを能書き、うんちくで終わらせず、現場で実践できる状態。すなわち、きちんと自らの“モノにする”という状態です。そして、ここで十分と思ってはなりません。最後の段階があります。それは、他の者にその知識を伝授し、育てることが出来る状態です。大学院での教育は最終的に皆さんを指導者の一人にすることを目指しています。
 二つ目の節目までは、あるいは一人で必死に学べば行き着けるかもしれません。しかし、最後の段階となると、自分の殻にこもっていてはダメです。様々な人とコミュニケーションをし、うまく伝わらない、理解してもらえない状況となれば、押してダメなら引いてみる、といった試行錯誤を繰り返す必要に迫られるはずです。それを厭わないでください。
 そのようなことが続けば、気持ちが萎える時があるかもしれません。そのようなときは、繰り返しになりますが、長期的展望、すなわち、今の自分は、いつ、どこで、何を目指しているのかを思い出してほしいと思います。
 冒頭に話した福島の復興への取り組みも同じです。目先のトラブルや課題への対応に忙殺されていると、次第に視野が狭くなり、何を目指しているのか、何のための行動なのかを見失ってしまいがちです。常にその先、福島が誰もが住みやすく、子供を安心して育てられる街にすべく、医療と健康の面から復興を支えるという使命を意識し、ここまで私たちは歩んできました。皆さんの学びも同じです。皆さんの志、目標など常に先を見据えてこれからの学び、研究に邁進してください。

近視眼的にならず広い視野を、短絡的にならず長期的展望を。
愚直で大いに結構。
私たちはしっかり皆さんをサポートし、一人一人の志が達成されることを祈っています。

令和6年10月1日
公立大学法人福島県立医科大学
学長 竹之下 誠一

事務担当 : 教育研修支援課

学生総務係 : 電話 024-547-1972
FAX 024-547-1984
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