性差医療とは

まず、その歴史からご説明いたします。

米国では1977年医薬品局から妊娠の可能性のある女性を薬の研究に参加させないように通達がだされました。これは、サリドマイド事件やDESという流産を防止するために使われていた薬によってそのお母さんから生まれた女児に膣癌が発生したためです。それ以降、女性は医学・薬学研究の面から除外されてきました。

これは、ある意味危険なことからはずされることですから喜ばしいことと思われていたかもしれません。しかしながら、1980年代の中ごろ女性のデータがあまりにも少ないことに気づかれたのです。これは生殖器以外の病態、疾患については男性から得た知見を女性にそのままあてはめて診断、治療が行われてきたことを意味するものでした。

それ以降、すべての年齢の女性において、女性特有の病態について研究されるべきであることが唱えられ始め、米国政府は率先して女性における病気の診断、治療、予防法の向上を目指すように主導してきました。1996年から現在まで全米に21カ所女性に特化した女性のための大規模な医療センターも設立されました。

このような米国の流れを組み、日本でも2001年鹿児島大学、千葉県立東金病院に「女性外来」が開設され、それ以後、全国に急速な拡がりをみせたのです。福島県立医科大学「女性専門外来」もそのひとつです。当時、米国のような国レベルの動きはなかったにせよ、日本の「性差医療」が花開き始めたといえるでしょう。

さらに、日本では「傾聴」という態度が重視され、ひとりひとりの患者さんのお話をよく聞いた上で、疾患や臓器だけでなく全人的にみさせていただこうという医療の側面をもつようになりました。

次に「性差医療」が何を担い、何を目標としているかについて以下があげられます。

1)(1)男女比が圧倒的にどちらかに傾いている病気(自己免疫疾患、骨粗鬆症、うつ病等)
  (2)発症率はほぼ同じでも男女間でその経過に差をみるもの(心筋梗塞など)
  (3)いまだ生理的、生物学的解明が男性または女性で遅れている病態
  (4)社会的な男女の地位と健康の関連など(ジェンダーと病気の関係など)
につき研究をすすめその結果を病気の診断、治療、予防法に反映することです。これらのことが明らかにされてくることにより、さらに進歩したきめ細やかな医療を患者さんに提供できるようになります。

2)「傾聴」の態度です。じっくりお話をお伺いすることで、患者さんに医師が近づき、信頼関係ができ適切な診断と治療を見出すことができます。

最後に、現在まで日本において「女性外来」が「男性外来」より多く開設されてきました。しかしながら、男性においても自殺、癌など解決されなければならない数多くの問題が残されております。「性差医療」を「女性」「男性」両性において実践し、発展させていくことにより、患者さんまた県民の皆さんにきめ細やかな医療また健康支援を提供することが「性差医療センター」の重要な役割です。